大きな電力を使用する会社や工場、商業施設では、様々な電気事故への対策を行うことが重要です。キュービクルの内部にも遮断機や開閉器といった保護装置がありますが、外側の電気事故には対応することができません。
そこで必要となるのが、高圧気中開閉器というものです。では高圧気中開閉器とはどのような装置でしょうか、またPASとどのように違うのでしょうか。
今回はこれらの点について説明いたします。
高圧気中開閉器とはいったい何?
高圧気中開閉器とは、開閉器という名前の通り電気回路を開閉させる装置で、配線や設備に故障が発生した場合に電気の流れを遮断することができます。この電気回路の遮断を空気中で行うので、気中開閉器と呼ばれています。
高圧の電流が流れている回路を切り離そうとする場合、アークが発生して電流が流れ続けようとするため、なかなか切り離すことができません。この気中開閉器は空気中でアークを冷却し、アークを消して電気回路を切り離します。
以前は絶縁油の中で遮断を行うものが一般的でしたが、事故が多く発生したために現在では気中開閉器が使われています。
この装置は開閉器として働きますが遮断機能は無く、短絡事故や地絡事故が発生した場合にその電流を遮断することはできません。しかし高圧気中開閉器には、基本的にSOGという装置も設置され、短絡事故に対する保護機能として働いてくれます。
需要家の施設内で短絡事故が起きた場合、そこで電流を遮断できなければ電力会社側が変電所などで遮断するしかなく、近隣一体が停電し大きな問題となってしまいます。
しかし高圧気中開閉器のSOGが働くことによって短絡電流を遮断しますので、変電所が電気を遮断して地域停電が起こるということはありません。
このように高圧気中開閉器は、短絡事故や地絡事故からの保護として働き、波及事故につながるのを防ぐ役割を果たします。
PASとの違いを知っておこう
PASは英語のpole mounted air switchの略で、電柱に設置された気中開閉器という意味になります。基本的には施設内の電柱に設置されますが、電柱を立てるのが難しい場合は外壁に設置します。
また一般的にPASは、電力会社側と需要家側の責任の境界点となる、責任分界点に設置される開閉器を表します。PASは需要家が設置するもので、施設内の電気設備の維持管理は需要家が責任を持って行う必要があり、それを明確にするために責任分界点に設置されます。
責任分界点をどこに設定するかは、電気の供給を受ける際に電力会社と需要家との協議によって決められますので、それぞれ違った場所になります。
しかし多くの場合施設内に最初に建てられた1号注という電柱を通して電気が供給されるので、基本的にそこが責任分界点となりPASが設置されます。
開閉器には他にもいくつかの種類や使用方法があり、例えば配電盤に設置されて、高圧電流を遮断するための遮断機として用いられることもあります。
PASは空気中で回路を遮断しますが、ガスによって遮断するものもあり、それは柱上ガス開閉器(PGS)と呼ばれます。
また架空線で引き込むのではなく地中に高圧ケーブルを通している場合、地中線用気中開閉器(UAS)や、地中線用ガス開閉器(UGS)が使用されます。
まとめ
地絡事故によって停電が発生してしまい波及事故につながるなら、停電による損害賠償を請求されたり、経済産業省への事故報告が必要となる可能性があります。
そのような大きな事故を未然に防いでくれる高圧気中開閉器は、高圧電力を必要とする大型の施設にとって大切な設備です。キュービクルなど高圧受電設備を長く使用していて劣化が気になる状況であれば、高圧気中開閉器の設置を検討されることをお勧めします。
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